感情制御と文化：精神的健康への示唆

名古屋大学大学院情報学研究科

with 石井 敬子

日常生活、特にストレスフルな出来事に対し、適切に感情を制御し対処することは、幸福感の向上や抑うつの低減といった精神的健康の維持・改善に不可欠である。一方で、当該文化において支配的な自己観や規範は、感情制御やコーピング方略（ストレス対処方略）の使用とその有効性に影響を及ぼしうるものの、その知見は限定的である。そこで本発表では、感情の再評価や抑制（表出）、さらにセルフ・コンパッションが適切なコーピング方略の使用とどの程度関連しているのか、そして幸福感に代表されるポジティブ感情や孤独感に代表されるネガティブ感情にどのように反映されるのかについて、経験サンプリング法の調査も交えた一連の日米比較研究に基づく成果を報告する。その上で、感情制御やコーピングに関する文化的特性を踏まえた心理的介入のあり方について考察する。